他の専門医に比べて病理医が不足していること、特に癌専門の病理医が危機的に不足していることはご存知でしょうか。
癌はただ細胞や組織の診断を行うだけでなく、レベルを正確に把握し、転移の可能性の有無、手術の有効性、抗ガン剤や放射線治療の適正など、今後の治療方針を即座に的確に決定していくスピードが非常に重要となります。
そこで今回は、病理医が不足している現状と、その具体策について考えていきたいと思います。
病理医が不足していると言われるその根拠は?
日本全人口は1億2623万人(平成31年度4月現在)で、その中でも医師と呼ばれる立場にある人は32万人ほどおり、日本国内の病院だけでも9000近くの医療施設があることから、約395人に一人は医師であり、約14,025人に1施設の病院がある計算になります。
これは世界的に見ても国民一人あたりにおける医療施設の数という面だけ見ると、かなり整っているように感じられるのではないでしょうか。
しかしながらこれは県によってバラつきがあるため、医療の地域格差は現段階でも解消に向かっているとは言えない現状があります。
それに加えて病理医は全国でも約2300人しかおらず、約54,882人の病理診断を一人で行なわなければならない計算となるわけです。
癌大国の日本は、毎年約10万例の癌が新たに診断されている現状ですので、病理医一人につき約43人の癌を新たに発見していることになります。
癌による死亡なども含めて推移しても、日本には約90万人の癌患者が常にいる計算となり、病理医一人あたり約391人の患者の病状を把握することが求められる事態となっています。
先進国の日本が癌大国と言われるのは、他の先進国と比較して、高齢化のスピードが速いからです。それが、癌死が増えている一番大きな要因だと言われています。日本の癌死亡者数は、団塊の世代が80代後半になる2030~2035年くらいまでは、増加し続けるでしょう。
よって、将来的には日本国民の2人に一人は癌を発症する可能性があり、病理医不足の対策が急がれているところです。
病理医不足解消なるか・・・連携病理診断
離島などの僻地の病院、病理医不在の病院、または一人病理医の病院、常駐している病理医でも診断が困難な場合、他の病院にいる病理医と連携して病理診断を仰ぐことができるシステムが整いつつあります。
病理標本(プレパラート)あるいはデジタル病理画像の送付と解析により、病理医が常駐していない病院でも遠隔術中迅速診断ができるようになってきました。
診療報酬の観点から見ると、今までは複数施設にまたいで患者から治療にかかる診療報酬を一か所でまとめて受け取れる仕組みがなかったため、わざわざ別の病院に足を運んで医療費が2倍にも3倍にもなってしまうことが問題視されていました。
しかし2012年より算定方法が変更され、医療費の面から見ても連携病理診断を受けやすくなっている現状です。
今後もより多くの医療施設間で連携病理診断のシステムが整うことで、病理医不足の解消と医療費の患者負担が軽減されることが期待されています。
病理診断委託をご検討中の方はぜひ一度、淀屋橋クアトロアールクリニックへご相談ください。